2012年9月2日日曜日

Google、Yahoo!、HP...成功事例に学ぶ「20%ルール」を導入するポイント

Google、Yahoo!、HP...成功事例に学ぶ「20%ルール」を導入するポイント

lifehacker.jp | Nov 30th -0001
以前にもご紹介した通り、Googleでは社員に「勤務時間の20%は、通常の職務を離れて自分のやりたいことに取り組んでよい」という独自の勤務制度「20%ルール」を定めています。今回は、このような制度の歴史と事例を振り返るとともに、自らもこのルールを取り入れる際に気をつけたいポイントを考えます。

ソフトウェア業界を中心に、同様の制度は広く知られていますが、この歴史は意外に古く、1948年の3M(スリーエム)の例(参考記事・英文)にまでさかのぼります。この変遷について、オープンコミュニティ「Stack Overflow」の共同創業者で「Coding Horror」を運営するブロガーのJeff Atwood氏は、次のようにつづっています。

1974年、3Mの科学者アート・フライ(Art Fry)氏は、画期的な発明を思いつきました。接着剤を紙の裏に付けた付箋「Post-It Note」を発明したのです。実は、この象徴的なプロダクトは、「勤務時間中に自由なアイデアを追究してよい」という3Mの「15%プログラム」から生まれたもの。このような制度は一見、社員側にだけ都合のよいものに見えますが、この自由な時間からベストセラー商品が数多く生み出されているのも事実。Googleやヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard Company、HP)といった現代の一流テクノロジー企業も、これに倣っています。


HPでは、明文化された制度にはなっておらず、慣習として実践されているようです。作家のロバート・X. クリンジリー(Robert X. Cringely)氏(英文記事参照)は、この詳細について、次のように述べています。

HPは、金曜日の昼休み後、10%の時間を自由なイノベーションに当てています。HPのパロアルト (Palo Alto)のオフィスでは、金曜日の午後、エンジニアたちがそれぞれ思いついたアイデアに取り組みます。また、この時間は、顕微鏡、電子マグネトロン、溶剤など、必要なものを自由に会社の倉庫から持ち出し、使うことができます。HPは、この制度を通じて数々のイノベーションを創造し、プリンターなどの優れた製品を生み出してきたのです。

おそらく、HPは1939年頃からこの制度を導入していたと考えられます。例えば、デイブ・ラジェット氏(Dave Raggett)は、このHPの「10%タイム」を利用して、HTMLの発明に大きな役割を果たしたとみられています。

概念では3MやHPなどに先行されているものの、Googleはどの会社よりも実際の「戦略」としてこのような制度を取り入れ、システム化して普及させた企業です。現時点では、Googleの採用ウェブサイトで20%ルールに関する記述は見当たりませんが、Googleの企業文化の重要な一部となっています。GmailやGoogleニュース、Googleトーク、Google AdSenseも20%ルールから生まれたサービスです。Googleの元社員で米Yahoo!の現CEO、マリッサ・メイヤー氏(Marissa Mayer)によると、「Googleのプロダクトの半分は20%ルールから生まれた」そうです。

Googleの20%ルールに似た取り組みとして「Hack Day」があります。Hack Dayは勤務時間から24時間を確保し、その時間はグループが共同で仕事をすることを推奨するという取り組みです。2005年、チャド・ディカーソン(Chad Dickerson)氏がYahoo!で初めて実施したところ、大きな成功を収めました(英文記事)。

Hack Dayの発想は極めてシンプル。私の部署にいるエンジニア全員を休みにし、やりたい開発を何でもやっていいとしました。ただし、決まり事を2つ定めました。「24時間以内に何かしら創ること」、「制限時間内にそれを発表すること」です。Hack Dayの基礎は、小規模なスタートアップ企業で実践されているものから着想しましたが、既存の大企業でこういうことをやろうという人はいませんでした。

初のYahoo! Hack Dayは成功しました。社内で格闘しながらイノベーションを進め、24時間で70ものプロトタイプを創出。社員たちが興奮に大声をあげ、叫び、喝采する、喜びに満ち、熱のこもった環境の中、これらが発表されました。Tシャツ姿で寝不足の開発者たちは、金曜日の深夜まで残り、「ただそれを創りたいから」という思いだけで作り上げたプロトタイプを発表します。エリック・レイモンド(Eric Raymond)氏は、著書『伽藍とバザール(The Cathedral and the Bazaar)』において、「ソフトウェアにおける偉大な仕事はどれも、開発者の個人的な開発欲の追究から始まる」と述べていますが、Hack Dayは、Yahoo!社内の無数の開発欲が集まり、これを追究する場となったのです。


一方で、ソフトウェア開発企業Atlassiaでは、2005年から四半期ごとに「ShipIt Day」を実施。Googleの「20%ルール」に倣ったところ、あまり良くない結果(英文)が出たそうです。

最大の問題は、20%の時間を予定に入れること。Atlassianでは、プロダクトを頻繁にリリースしているので、開発チームに「ダウンタイム」を予定させるのはとても大変です。特に小規模なチームは、核となる商品開発の時間から捻出しなければならず、至難の業。それは、チームリーダーが厳しいからではなく、開発者が20%ルールを過ごしている間、同僚に作業の負荷をかけることを嫌がるからです。

しかしながら、3M、HP、Google、そしてYahoo!では、企業が社員に与えた「やりたいことを何でもやっていい」というわずかながらの時間によって、多くの優れた人気商品やサービスが生まれてるのも事実。これはいったい何を意味するのでしょう。われわれはみな、普段の仕事をサボって、自分のアイデアに取り組むべきなのでしょうか。

Googleの20%ルールやYahoo!のHack Dayのような成功事例はたくさんあります。ゆえに、業種や職種を問わず、このような制度の導入を会社に働きかける価値はあると思われます。しかし、実際に行動に移す前に、自分も会社もその準備が整っているかどうか、事前に考えてみましょう。判断のポイントとしては、以下の4点が挙げられます。

1. スケジュール上、適度な余裕があるか?

スケジュールに余裕がなければ、「20%ルール」はおろか「Hack day」すら現実的ではありません。もちろん、誰もが常にフル回転で働いているとしたら、すでに健康的な状態ではないでしょう。誰しもここ一番の勝負時はあるものですが、たえず職場がそういう状況なら、まずはこの課題に対処するのが先です。


2. 「空想にふける時間」を問題にしないか?

「あいつは忙しそうに見えない」などと非難する人がいるなら、その会社は仕事文化の面から、20%タイムやHack Dayのような取り組みを受け入れがたいかもしれません。しかし、必ずしも空想にふけることは仕事と対立するものではありません。むしろ、創造的な課題解決には、時に必要なものです。このテーマについては、ライフハッカーでも「『あえてダラダラすること』があなたの毎日に健康と創造力をもたらす」をはじめ、「ぼーっとしているとき、脳は活発に動いている」や「空想するとクリエイティブになれる!と研究で判明」など、何度か取り上げてきました。


3. 失敗が許容されるか?

「好きなことをやってもいい」という自由を与えても、生み出されたプロジェクトは反響がなく、散々な失敗に終わることもあります。しかし、失敗なくしてイノベーションは存在せず、真の実験にもなりえません。「失敗することを自分に許すと失敗が少なくなるという説」にもあったように、スキルや習慣を改善するために、自分の失敗を受け入れる意識を持ちましょう。失敗から素早く学び、どんどん進むことこそ、大いに価値があります。


4. 個人の実験が尊重されるか?

プロジェクト全体のタスクやスケジュールを次から次へとこなすことと比べ、個人の実験が健全に尊重されないのであれば、こういう取り組みは失敗に終わるでしょう。会社として、同僚として、「大事なイノベーションや改善は、会社に属するあらゆる人々から、いつでもボトムアップで生まれる」ということを、心から信じる必要があります。


もちろん、勤務先にこのような制度がない場合や、フリーランスで仕事をされている方は、自律的に時間をマネジメントし、自分を自由に解放する時間を確保するというアプローチもできます。具体的なコツについては、「Googleに学べ!仕事時間の2割を自分プロジェクトに使うという仕事術」で、以下のように紹介しました。

まず「20%」という数字に囚われる必要はありません。週に1日とか一日30分といった具合に、自分の仕事との兼ね合いで適切な時間を配分しましょう。

また、仕事は必ず「相手」がいるもの。スケジュール通り、予定通りに自分の時間を確保できるとは限りません。少しの時間を見つけ、思いついたアイデアやひらめいたインスピレーションを頼りに、小さなことからスタートさせるのがオススメ。

チャド・ディカーソン氏も「Hack Dayの基礎は、小規模なスタートアップ企業で実践されているものから着想しましたが、既存の大企業でこういうことをやろうという人はいませんでした」と、言っていたように、良いアイデアをいかに自分の組織に落としこむのかが肝心です。上記の4点をクリアすることも含め、社内に新しい風を取り入れる一案として、検討してみる価値はあるでしょう。

Original Page: http://www.lifehacker.jp/2012/08/120824google8020rule.html

Shared from Pocket



Sent from my iPad