[メール編]もらった資料をそのまま送ってはいけない
itpro.nikkeibp.co.jp | Nov 30th -0001数多くあるメールの便利な点の一つに、資料を添付できることがある。電話が全盛の時代はFAXを併用して資料を送るしかなかったが、メールであればマウス操作で簡単に資料データを添付して相手に送ることができる。
PM(プロジェクトマネジャー)は、報告資料やプロジェクト管理資料などステークホルダーとさまざまな資料をやり取りしている。その中には、他の人が作った資料をもらうことも多い。
このときPMは、もらった資料をそのまま別の人に送ってはいけない。その資料が想定外の人の手に渡ったことで、大きなトラブルに発展してしまうことがあるからだ。
人が作った資料をそのまま送ったPM、Jさんのケース
SIベンダーに所属するPM、Jさんはあるとき、プロジェクトを一緒に進めているユーザー企業の担当者から、「このプロジェクトとは別のテーマで案件を立ち上げようと思っているんだ。Jさんの会社も得意な分野だと思うので、提案してくれないかな」と言われた。
「そのテーマのプレゼン資料は、確かセールスエンジニアのUさんが用意していたな。すぐに提案できるぞ」。そう思ったJさんは早速、Uさんにお願いして、プレゼン資料を一式送ってもらった。Uさんから届いた提案資料は、数十枚に上るスライドが含まれている「フルバージョン」、分量が軽めの「初回訪問用バージョン」、さらにスライドの数を絞り込んだ「配布用バージョン」の三つがあった。用途に合わせてUさんが用意してくれたのだ。Jさんはそのうち初回訪問用バージョンを使ってプレゼンテーションを行うことにした。
Jさんがプレゼンしたところ、ユーザー企業の担当者も強い関心を寄せてくれた。手ごたえを感じたJさんは、「あとで資料をメールに添付して送ります」と伝えた。
「これはかなり本気で検討してくれそうだぞ。詳しい方がいいだろうから、Uさんからもらった三つの資料のうち、配布用ではなくフルバージョンの資料データを送ろう」。フルバージョンの資料データには、システム導入事例や製品スペック、価格表も掲載してある。本気で検討してくれるユーザー企業の担当者にとって必要な情報がすべてそろっているわけだ。Jさんは早速、フルバージョンの資料データを添付し、メールを送った。
ところが、Jさんが送ったフルバージョンの資料データで大きなトラブルが巻き起こった。
Jさんが送ったフルバージョンの資料の中には、別のユーザー企業F社の導入事例が紹介されていた。実は、F社からは、事例として外部に公開しないように求められていた。Uさんはそれを知っていたので、フルバージョンには入れていたものの、初回訪問用バージョン、配布用バージョンにはF社の導入事例は入れないように注意していた。
UさんはJさんに求められて資料を送るとき、「Jさんなら古い付き合いだから大丈夫だろう」と思い、フルバージョンを含めた三つすべての資料を渡していた。Jさんは三つのうち、フルバージョンの資料データをプレゼン後に送った。このとき送った資料データは、Jさんからもらった状態のまま。Uさんはうっかり内容を確認せずに送ってしまった。
フルバージョンの資料を受け取ったユーザー企業の担当者は、すぐに社内の関連部署にメールを転送した。その転送先の中に、F社と取引がある社員が含まれていた。フルバージョンの資料を読んだその社員、F社に行ったとき「F社さんもうちが今、導入を検討しているSIベンダーにシステムを開発してもらったんですね。できたシステムの使い心地はどうですか」と尋ねた。ここでいうSIベンダーはJさんが所属している会社のことである。
「どうして当社がそのベンダーに開発してもらったことを知っているんですか」と、F社の担当者はびっくり。SIベンダーから、情報が漏れていることが発覚してしまったのだ。F社はすぐに、Jさんたちの会社に猛烈に抗議。一時は、取引停止になるかという事態にまで発展してしまった。
資料の添付や転送が簡単だからこそ気を付けよう
Jさんのケースは、もらった資料の内容が公開してよいかどうかを確認することなく、そのまま送ってしまったことが問題の発端になった。プロジェクトでは、PMが自ら作った資料をメールで送った場合でも、受け取り手が他の人に転送することもあるので、注意を払いたい。
もう一つ気を付けたいのが、さまざまな人の手に資料がわたっていくと、当初の内容と変わる可能性があるということ。資料が転送されていくうちに、いろいろな人の手が加わると、「どれがオリジナルなのか」「どれが最新のものなのか」が分からなくなり、現場が混乱してしまう。
メールにファイルを添付するのが簡単だからこそ、間違いは起こりやすい。次のようなファイル添付の五つの注意事項を踏まえてメールを使うようにしよう。
- メールに資料を添付するときには、その資料が第三者に転送される恐れがあることを認識しよう
- 受け取ったメールの資料を転送するときには、自分がその資料を第三者に転送することを許諾されているのかどうかを確かめよう
- 受け取ったメールの資料に手を加えるときには、本人に修正後の資料を返信して確認しよう
- 資料が広範囲の人々に転送される場合には、改ざん・改変されないPDF形式などのファイルにしてから送ろう
- メールの添付資料は「部門外秘なのか」「社外秘なのか」というように、公開範囲を意識して取り扱おう
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)
システムインテグレータ 代表取締役社長 東芝、住商情報システムを経て、1995年にシステムインテグレータを創業。前職でProActive、現職でGRANDITという二つのERPパッケージの開発に関わるほか、ECサイト構築ソフトSI Web Shopping、開発支援ツールSI Object Browserシリーズなどのパッケージ開発を手掛けている。最近は統合型プロジェクト管理システムOBPMをリリースし、IT業界の合理化をライフテーマとして活動している。
Original Page: http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20120626/405344/
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