新しく立ち上げるWebサービス向けSEOの流れ in the looop 直人
media.looops.netブログメディア「In the looop」 では、ページビューの約半分は当月執筆した記事で、残り半分は過去に蓄積された記事からです。過去のブログ記事にも書いたとおり、公開直後のトラフィックにソーシャルメディアはかなり効くのですが、継続的な流入は検索エンジンやRSSが大切になります。GinzametricsというSEO管理ソリューションを提供している会社でSEO関連のブログを執筆されている清水 昌浩さんから、「新しく立ち上げるWebサービス向けのSEOの流れ」という記事を寄稿いただきましたので、ループス直人の編集でお届けいたします。
(以下、清水氏の原文を元に直人が加筆・修正・図表作成等の編集を行った)
新しく立ち上げるWebサービスの認知獲得について、最初は広告キャンペーンやリアルの場でのイベントなどに頼ることになりますが、コンスタントな流入確保のためにはSEOの強化は必要でしょう。今回は、ある会員制のWEBサービスをモデルに、新サービス立ち上げ時のSEOの流れを説明してみたいと思います。
このブログ記事が想定するWebサービス/Webサイトのイメージ
以下のようなWEBサービスを想定してケーススタディを行いたいと思います。
- 会員型のWebサービス。
- ターゲットや用途、利用シーンが明確。競合サービスも明確。
- Webサービス運営企業は名の知れた企業。
- 現在の検索ワード上位は社名を含むワードが多い。
目的の明確化、考え方の提示、優先度付け
新しいWebサービスを立ち上げる場合、プロジェクトに開発系・営業系の人材は必須であるものの、SEOを行う人材までは確保できていないケースが多いのではないかと思います。もしくは、SEOに関する何かしらの知識はあるも、何からどう手をつければ良いかよくわからない、というケースもあるでしょう。
SEOをきちんとやってオーガニックなトラフィックを増やしたいという目的は明確なものの、上記のようにやるべきことが整理できず、優先度がつけられないというケースです。このようなことは、新しいWebサービスであろうが既存の大規模サイトであろうが、SEO専門家が内部にいようがいまいが、よく起こることだと思います。
そのようなケースで私がまず行うのは以下の3つです。
- 目的の明確化
-
ユーザー(キーワード)の分類と施策整理
- 優先度付け
目的の明確化
SEOを行う目的としては、「流入確保」が真っ先にあげられるのですが、今回は新規Webサービスということで新規会員獲得、つまりコンバージョンを増やすことを目的としてケーススタディを行います。
ユーザー(キーワード)の分類と施策整理
まず、ユーザー(キーワード)を3種類に分けます。
① ブランドワード/サービス名
② 現在実際にサイトへの流入があるキーワード
③ 現在サイトへの流入がないキーワード
この3つに分けたのは、採るべき施策が異なるためです。
①.ブランドワード/サービス名
→キーとなるのはSEOではなく、PR活動など。
②.現在実際にサイトへの流入があるキーワード
→アクセス解析の数字を元に、検討/判断できる。
③.サイトへの流入がないキーワード
→アクセス解析の数字が役に立たない。
優先度付け
自社でできること、対外的な調整が不要なものを行うことにし、ページのtitle要素などの追加/変更と、読み物系コンテンツの継続的な作成/追加をアクションとしました。
セグメントユーザー毎のSEOの進め方
前章で分類した「①ブランドワード/サービス名」、「②現在実際にサイトへの流入があるキーワード」、「③サイトへの流入がないキーワード」のそれぞれにSEOを検討していきます。
①ブランドワード/サービス名
SEOの観点では別段アクションをとらず、主たるブランドワード/サービス名の中で一定のトラフィックがあるキーワードが、1位から順位が下がってないかだけ、たまにチェックしましょう。本当は毎日チェックするほうが良いのですが、新規WEBサービスの場合、現在のトラフィックが少なくて順位下落しても影響度は少なく、SEOに割けるリソースにも限りがあるため毎日でなくてもよいと判断しました。
②現在実際にサイトへの流入があるキーワード
すでに実際にサイトへの流入があるキーワードの分析手順は以下のような流れになります。

各ステップで行うSEOの概要を、以下で説明します。
STEP1 : コンバージョンワードがあるか?
既にサイトに流入があり、かつ既にコンバージョン実績のあるキーワードは、順位を上げて流入を増やせば、自ずとコンバージョンも増えるだろう、という考え方です。CV(コンバージョン)ワードがあまりに少ない場合は、中間コンバージョンに至ったワードや、主観的に見て取り込みたいと思えるワードも、対象になりうると思います。
※この作業はGoogle Analyticsなどのアクセス解析ツールにて実施。
STEP2 : そのワードは何位か?
そのワードの現在の順位を確認します。1位2位など既に上位表示されているワードは、それより上げようがないので、対象から外します。現状順位から、順位を上げる余地のあるキーワードを見つけます。
※この作業はGinzametricsにて実施。
STEP3 : そのワードの市場検索数はどの程度か?
判断が難しい部分ですが、市場検索数があまりに少ないワードは避ける方が妥当かもしれません。
ここまで、キーワードの選定になります。
※この作業はGoogleキーワードツールにて実施。
STEP4 : どのページに入ってきているか?
STEP1〜3で選定したキーワードで検索した結果、サイトのどのページに入ってきているか把握します。SEOにおいて実際に手をつける対象はページだからです。ワード数が少なければ、一つ一つ手作業で検索することもできますし、手間であればGinzametricsで自動的にページを見つけることもできます。

※この作業はGinzametricsにて実施。
ページ数が少ないサイトの場合、キーワードが流入するページは、多くの場合トップなどになります。
トップページを30キーワードで対策を、、、ということは避ける方が良いため、どのワードで既存ページに対して修正を施し、どのワードで新規ページ/コンテンツを作るかの判断が必要になります。
STEP5 : そのキーワード×ページで順位を上げられそうか?
そのキーワードの検索結果で、自社ページよりも上位のページを確認します。今のページに対する内部施策のみで順位を上げられそうか、内部施策余地があるか確認します。

※この作業はGinzametricsにて実施。
STEP6 : そのキーワードで別ページ/コンテンツ作る方が良いか?
STEP5に当てはまらないワードは、新しいページ/コンテンツを作って、その新ページで当該キーワードでの上位表示を狙います。
③現状サイトへの流入がないキーワード
現状サイトへの流入はないが、今後流入を獲得したいキーワードに対するSEOは以下のような流れで行います。

STEP1 : サイトに来てほしいワードは何か?
検討に使えるアクセス解析のデータがないため、ブレストなどによりキーワードの洗い出しを行います。
そのサービスの利用シナリオ、そのサービスに関連する内容を想起するきっかけ、想定ユーザーの課題などから、キーワードの洗い出しをすることになると思います。
STEP2 : そのワードは何位か?市場検索数はどの程度か?
これらは「②現在実際にサイトへの流入があるキーワード」のSTEP2、3同等の目的です。
※この作業はGinzametrics、Googleキーワードツールにて実施。
STEP3 : Pay Per Click広告を出して、CVRを調査/検証
ここまでのSEOを通じてキーワードを選定してきましたが、洗い出したワードは取り込むべきニーズとして正しいかどうかはまだ検証されていません。ページ/コンテンツを作ってしまってから、正しくないニーズだと判明し、コンバージョンに全くつながらないことは避けなければなりません。
ページを作りこむ前に「そのニーズが正しいかどうか?」「サイトに連れてきたら果たして会員登録(コンバージョン)するかどうか?」を検証する方法として、対象ワードでのPPC (Pay Per Click) 出稿があります。チェックすべき指標はシンプルに、ワード別のCTRです。CPC、CPAなどのPPCの一般的な効果指標はそこまで気にしなくてよいでしょう。CPAや順位別クリック率などの数字を元に、コンテンツに掛けてよい費用を算出することは可能ですが、今回の説明では割愛します。
ここまでがキーワード選定になります。
STEP4 : そのワードで競合サービスは何位か?
どのページにランディングし、コンテンツはどのようなものか?
競合を調査する目的は、もちろん競合サイトよりも上位に表示されたい希望はあると思いますが、競合コンテンツがどの程度のものかを知るためでもあります。競合サイトが、当該ワード専用と思えるページを用意しているかどうかによって、作るべきコンテンツも変わってくるでしょう。また、直接的な競合でなくとも、当該ワードで上位表示されるページに、大手サイトがない方が、上位表示できる可能性が高まります。
※この作業はGinzametricsにて実施。
STEP5 : そのキーワードで別ページ/コンテンツ作る
これは「②現在実際にサイトへの流入があるキーワード」のSTEP6と同等です。
まとめ
「②現在実際にサイトへの流入があるキーワード」、「③サイトへの流入がないキーワード」の両方とも、SEOとしては「キーワード選定」「ソース修正/新ページ追加」に分かれます。キーワード選定により重きをおくように見えるかもしれませんが、それはその通りで、例えばアメリカではキーワード選定の重要性はよくよく理解されています。
アメリカのMarketingSherpaのレポート「Search Marketing Benchmark Report – SEO Edition」によると、SEOで効果を上げるために最も重要なものとしてKeyword Research、つまりキーワード選定が上げられています。

【出典:2011Search Marketing Benchmark Report – SEO Edition】
2012年の同レポートでは、最も効果を生む施策としてコンテンツ制作が、次いでキーワード選定が上げられています。

【出典:2012Search Marketing Benchmark Report – SEO Edition 】
キーワード選定において、順位と市場での検索数を中心に考えることが日本では多いように思いますが、今回のケースではコンバージョンを中心に考えています。頑張って順位を上げたのに、その結果トラフィックやコンバージョンが増えないのは寂しいものです。個別なチューニングも大事だとは思いますが、その前に適切なキーワード選定=取り込むべきユーザーニーズの検討を行うのが良いと思います。
Ginza Metrics

SEO管理ソリューション。手作業によるデータ収集やレポート作成を行う必要がなくなり、最新の検索順位、SEO経由でのビジネスインパクトの度合い、コンテンツを改善するためのアドバイス情報などをタイムリーに知ることが出来る。
筆者紹介
清水 昌浩(しみず まさひろ) Ginzamarkets の CountryManager。名古屋大学法学部卒業後、外資系コンサルティングファームにて、事業再構築やIT ROI最適化等、深く企業の変革に携わる。 |
Original Page: http://pocket.co/sosNi
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