2012年5月27日日曜日

進化するO2O、ユナイテッドアローズの挑戦《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》(1) - 12/05/11 | 12:03

進化するO2O、ユナイテッドアローズの挑戦《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》(1) - 12/05/11 | 12:03

toyokeizai.net | Nov 30th -0001

 アパレル業界は景気後退の影響で厳しい経営環境が続いている。そんな中、着実に成長を遂げている会社がある。衣類・小物などのセレクトショップ国内大手、ユナイテッドアローズだ。

 2011年3月期の業績は、売上高は前期比8.5%増の約905億円、営業利益は約73.8億円(同49.4%増)、純利益は約35.9億円(同156.2%増)。そのうち、ネット通販の売り上げは約90億円で、前期比31.7%増。リアル店舗、ネット通販ともに絶好調だった。12年3月期も好調を持続。06年3月期の最高純益約40億円を更新する勢いだ。

 注目すべき数字が、ネット通販売り上げ比率(EC化率)。11年9月6日付繊研新聞によると、10.6%というユナイテッドアローズのEC化率は、ユニクロ等を手掛けるファーストリテイリングの3.8%、無印良品を運営する良品計画の5.9%を大きく上回る。約90億円という売上高は、良品計画の約85.7億円を超えている。

 ユナイテッドアローズの成長エンジンの一端がここに垣間見える。

 高成長を続けているネット通販をはじめ、あらゆる新しいネットサービスを戦略的に駆使し、リアル店舗への来客や売り上げ向上につなげている。なおかつ高度に洗練されたO2O(オンライン・ツー・オフライン)戦略も持つ。

 「EC化率10%という数字は、結果として達成した数字であり、ECの売り上げを伸ばすことに注力してきたわけではない。あくまで主体はリアル店舗で、ネット通販は補完機能。リアル店舗とネット通販の融合は、リアル店舗の売り上げを伸ばすためのO2Oの取り組みの1つだ」。ユナイテッドアローズ事業支援本部でネット通販統括チームリーダーを務める相川慎太郎氏は、自社のネット通販事業の位置づけを語る。


相川慎太郎氏

 ユナイテッドアローズの自社通販サイトは、09年9月に開始された。当初から、ネットで商品を販売するだけではなく、リアル店舗へ送客するO2Oも目的としていた。

 通販サイトで商品を選択すると、取り扱いリアル店舗の一覧や各店舗の在庫情報が確認できる。この機能は、サイト開始と同時に始めた。


 「在庫確認だけの目的でサイトにアクセスするお客様も中にはいるのでは、と考えた。いわば商品カタログのような目的でネット通販サイトを利用する。リアル店舗とネット通販のどちらで買うかは、お客様が決めること。リアル店舗で買うための情報も、できるだけネット通販にも載せようと初めから考えていた。今後は、ネット通販で買った商品をリアル店舗で受け取れる方策も検討している」と相川氏。

 ユナイテッドアローズの会員カードの加入者は160万人超、1カ月当たりで60万人強の利用がある。

 買い上げ金額に応じて付与されるポイントは、リアル店舗とネット通販共に使える。ポイント共通化も、ネット通販の開始時からだ。リアル店舗で購入する顧客はネット通販でも購入すると想定していたので、店舗のポイントはネット通販でも利用できるようにした、という。

 「自社ネット通販サイトの売り上げは、店舗での購入者(会員カード加入者)が過半数以上を占める。店舗が近くにないためにネット通販を利用しているという人はほとんどいない。たとえば店舗がない青森では、ネット通販の売り上げも非常に少ない。多くの店舗がある首都圏のお客様が、ネット通販でも買っている」と、相川氏は自社ネット通販利用者の特徴を述べる。

 ネット通販での購入金額が多い顧客は、リアル店舗にも頻繁に来店する傾向がある。いわばファンに近い顧客といえるだろう。ネット通販とリアル店舗の融合による相乗効果で顧客の満足度を上げている。

 優良顧客の集まる場であるネット通販サイトを、リアルの現場でさらに活用する。通販サイト上で、リアル店舗より約2カ月早めに商品を販売する「先行受注会」という施策だ。

 相川氏は狙いを話す。「先行受注会はシーズンで推したい商品を主に販売する。お客様にとっては、店舗よりも早く、確実に買えるメリットがある。われわれにとっても早めに需要予測ができる利点は大きい。受注数が多ければ、リアル店舗へ送る数量を予定よりも多くするなど、調整できる」。

 ユナイテッドアローズのネット通販事業は、自社ネット通販だけではなく、ファッション通販モール「ZOZOTOWN」(運営スタートトゥデイ)や、ファッション雑誌連動型ネット通販モール「マガシーク」への出店など多くの販路を持つ。


 「それぞれ客層が違う。ZOZOTOWN、マガシークなどは独自の特色がある。たとえばマガシークは、われわれがリアル店舗で出店していない商業施設に入っているブランドも出店している。リアルでは獲得できていない新しいお客様を取り込める」と相川氏は、多くの販路を持つメリットを語る。

ソーシャルメディアも積極利用

 ソーシャルメディアの活用にもぬかりはない。

 ユナイテッドアローズは、ソーシャルメディアの黎明期といえる09年からすでに、ソーシャルメディアを活用したO2Oの取り組みを始めている。

 ユナイテッドアローズの展開する主力ブランドの1つ「グリーンレーベル リラクシング(以下、グリーンレーベル)」本部、副本部長兼販売統括部の部長を務める木村竜哉氏は、次のように振り返る。

 「O2Oという言葉は、09年秋冬ごろからグリーンレーベルの事業で意識して使い始めた。当時マスメディアとソーシャルメディアを融合した『クロスメディアプロモーション戦略』を事業部内で考えていた。従来のマスメディアを使ったプロモーションを行い、FacebookやTwitterなどで拡散して、結果的にリアル店舗に集客するというもの。そのために『O2O』という概念を事業部内で浸透させる必要があった」


木村竜哉氏

 10年3月、グリーンレーベルのFacebook公式ページを公開。10年の春夏には、「グリーンレーベルファン」というソーシャルメディアの投稿コンテンツを集約した自社サイトとFacebookページを連動させた販促施策を実施した。Facebookから自社サイトに誘導し、自社サイトでクーポンを用意、客を店舗へ導くという施策だ。

 現在は、ソーシャルメディアを使った販促に関しては、原則的にマスメディア、交通広告など従来型の広告と有機的に絡めて取り組む戦略をとる。


 ユナイテッドアローズにとって、O2Oは、ネットとリアルで相乗効果を上げるための当たり前のツールといえる。ほかにもさまざまな新しいO2Oサービスをツールの一環として冷静かつ巧みに活用する。

 11年6月、日本でFacebookが位置情報を利用したクーポン配布サービス「チェックインクーポンサービス」を始めた際には、パートナー企業として参加した。木村氏は、次のように話す。

 「チェックインクーポンは、10%オフなど粗利のマイナスが伴うため、むやみな利用は避けたいところだが、目先の売り上げ数字が欲しいときに活用する。準備に時間がかからず手軽に実施できるのもメリットで、特定の店舗だけ、あるいは特定の期間だけなど、ピンポイントで売り上げを作りたいときに利用できる」

 まさに冷静なる使い分け。

 11年10月には、スポットライト(本社・東京都港区、柴田陽社長)が運営する来店ポイントサービス「スマポ(スマートフォンポイント)」を渋谷・原宿の店舗で導入、12年2月には導入店舗のエリアを有楽町・丸の内へ拡大した。

 スマポは、利用客がスマートフォンのアプリを立ち上げ、参加店舗に来店して「チェックイン」するだけでポイントをもらえるサービス。貯めたポイントは、参加企業の商品券などに交換できる。通信機能を使って、利用客が店舗の中に確実に入ると自動で検知する仕組み。店舗内には専用機器が設置されている。

 現在、参加企業は、大丸、ビックカメラ、丸井、エイチ・アイ・エスなど。来店があった場合に、利用客とスポットライトに支払う成功報酬型のため、導入する際の店舗側の初期負担が少ない。

 「ビックカメラ、丸井など他の協賛企業の抱えるお客様が、われわれの新しいお客様になってもらえる可能性がある。とても魅力的。通常の莫大な広告費と比較しても、費用面でも取り入れやすい。今は実験段階で、サンプルデータが貯まってきたところ。これから本格的に、お客様の再来店や購買につながっているかなど実際の効果を調査する」と事業支援本部販売支援部の部長である須藤貴志氏は現在の状況を説明する。


須藤貴志氏

ボトムアップで施策を展開

 12年3月からは、リアル店舗の商品の在庫情報や価格をネット検索できる「Googleローカルショッピング」にも参加している。

 「Googleという最大の検索サイトの結果にわれわれの商品情報が出れば、間口が広がり、新しい経路でお客様を呼び込めると考えた。もともと自社サイトに在庫情報を載せていたので、データの提供も新たな負担にはならない。1時間半に1回、新しい在庫情報を載せている」と相川氏。

 さまざまな取り組みを見せるユナイテッドアローズだが、重要なことは「O2O」での全体戦略はないということ。トップダウンではなく、現場からのボトムアップで実行されてきたのだ。若い世代の現場からの発想。そこから策は生まれ、顧客ターゲットに合わせたブランドごとに適合した方法でビジネスを展開する。インタビューをした3人の担当者も30代半ばと、他社と比べて若手リーダーが活躍しているのが印象的だ。

 ファッション業界ならではといえる取り組みが、「UAスタイルシェア」だ。これは、ネット上でバーチャルな試着ができるサービス。ソーシャルメディアとも連携しており、ユーザー間でお互いのコーディネートを共有できる。着用可能なアイテムは、1万5000点以上。実際にリアル店舗に並んでいる洋服や小物と同じアイテムを「試着」できる。iPhoneアプリ版もスタートした。

 このサービスも、O2Oの流れの1つになっている。店舗とネット通販を併用する顧客の中には、事前にスタイルシェアでバーチャル試着をしてコーディネートし、めぼしい商品を見けておく人がいる。そして店舗や通販サイトに来店するというわけだ。

 スタイルシェアは、グリーンレーベルの店舗でも、接客サービス用にテスト導入され、iPadを使ったコーディネートの提案などに利用されている。木村氏は、店頭での意外な活用例を話す。「たとえば、女性のお客様が、彼氏やだんな様など、男性に何か買いたいがイメージが湧かない場合にも利用される。従来は、販売員が代わりに着たり、持参した服と合わせてみたりしていたが、バーチャル上で提案できるようになった」

 グリーンレーベルの事業では、今後はより進化したO2Oを意識するという。


 ウェブ検索やソーシャルメディアからの来店促進という従来のO2O(オンライン・ツー・オフライン)の軸に加えて、その前にオンラインの情報への接点をオフラインでどれだけ作れるかが、次のO2O戦略の課題だという。オフライン・ツー・オンラインという、リアルからネットへの動きだ。

 「実はすごくアナログ的なものが大切。オンライン情報に対するアナログ面での準備がどれだけあるか、効果的なトリガーをどれだけ用意できるか。たとえば、店頭での接客やサービス、交通広告、テレビCMなど。すべてが基本的に地道な作業によるものが多い。よりネット(オンライン)を意識すればするほど、よりリアル(オフライン)のつながりや行動が、ネット(オンライン)活性化のための非常に重要な要件となる。できるだけオフラインを重視し、オンラインが盛り上がる企画を作っていく」(木村氏)。

 オフラインを充実させることが実はオンラインを活性化させる。オンラインが活性化するとオフラインにまた戻る。リアルとネット、O2Oのサイクルだ。

 ネットとリアルの融合施策を、新規顧客の獲得や既存顧客の満足度向上に効果的に取り入れる。O2Oは、流行のスピードが速いアパレル市場を生き抜く強靭な成長エンジンとなる。ユナイテッドアローズが実践するO2Oは、アパレル小売企業としてのさらなる進化の過程の1つだ。

(ITアナリスト・松浦由美子 撮影:吉野純治 =東洋経済オンライン)

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Original Page: http://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/8cd66d0c6beebf81e3f55624e7fe0aec/

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