2012年6月3日日曜日

少人数組織(スタートアップ)の意思決定に関する4つの工夫と考察

少人数組織(スタートアップ)の意思決定に関する4つの工夫と考察

mocchiblog.com | Nov 30th -0001

会社を創業して、新しいサービスや事業作りのために時間と情熱を注ぎ込む生活をしていると、毎日かなりの量の意思決定を求められます。ちょっとした機能やデザインのことから、スケジュールとリリース計画、クレームの対応、言葉の選び方、取引先との交渉、日々のランチの内容(半分冗談ですが、切り離せない問題です)、そして資金計画や中期経営方針まで、あらゆる種類の意思決定が無数に降ってきます。

少人数=意思決定が早いとは限らない

「我々はベンチャーとして少人数でやっているので、意思決定もスピードも早いことが強みです」という声が多いようにも感じますが、意思決定が早いかどうか、その質を担保できるかというのは、人数や規模の問題ではなくて、どちらかといえば上手に「仕組み化」されていることのほうが重要ではないかと思います。単に人数が少ないということ自体は、質の高い意思決定を素早く回していけるという論拠にはなりません。「少人数チームだから意思決定が早い」というのは都合のいい解釈に過ぎないことを、まずは認識する必要がありそうです。

5〜10人ほどの小さな組織の意思決定について、Labit社がここ数ヶ月間に試行錯誤して、得られた結果を紹介してみます。ただし、10人以上の組織については僕は経営したことがありませんので、また異なるエッセンスが必要だとは思います。ここではスタートアップを対象に考察してみます。

1.意思決定するメンバーを、なるべく減らす(3人意思決定ルール)

これまでの経験から、または似たような他のチームを見ていて、5〜7人規模の組織にありがちな傾向として「あらゆる問題に対して、総意で意思決定していく」という問題が潜在していたようにも思えます。メンバー全員が創業者意識をもって取り組んでいる、ということは素晴らしいことなのですが、全員があらゆる議論に加わることで、その分だけ意思決定の時間が長引いていることを認識しなければいけません。

Labit社では、「この問題は、はたして全員が意思決定に関わるべきだろうか?」という問いかけを行って、可能な限り個別の意思決定に関わる人を減らしていく、ということをやってみました。その中で導入したのが「3人意思決定ルール」です。言葉の通り、なるべく3人で意思決定しようとする試みです。6人のメンバーは、それぞれの意思決定について議論すべき3人を選出し、3人が意思決定を行なって他のメンバーに共有します。代議制のようなものです。

この意志決定ルールを導入した結果、日常における70%以上の意思決定は、3人で必要十分にこなせるということがわかりました。全社的な影響を与える重要な意思決定は総意で行いますが、それが求められるのは3割以下です。例えばiOSアプリの技術的な問題解決を行うための意思決定であれば、iOSのエンジニアとサーバーサイドエンジニア、デザイナーの3人がいればいいかもしれません。広告の文言の選定だったり、予算の投下先だったり、ファイナンス計画だったり、多くの意思決定には3人が関われば十分でした。2人では質の担保が難しく、4人だと意見が分かれたり締まらなくなったりして、3人というのは絶妙な単位だと思いました。フレキシブルな組織だからこそ出来る工夫かもしれません。

2.意思決定部屋を作り、問題を小さく分割し15分単位で考える

意思決定のための部屋(会議室)を用意し、たとえ5分間の打ち合わせであっても、必ずその場所に移動して意思決定をすることにしました。Labitも含め、ベンチャーというのは1LDKのマンションの一室でやってたりしますが、狭い場所でもリソースをうまく工夫して、できれば部屋を変えてやったほうがいいと感じました。それは他の残りのメンバーの集中力を妨げないということと、頭の切り替えを促すということで、一定の効果をあげています。意思決定にかける時間は、だいたい15分前後であることが多いです。大きな問題をだらだらと話しあうのではなく、問題を小さく分割していき、必ず何らかの前進をさせる文化を作るということが重要だと思います。しかるべきプロセスを経て意思決定に入れば、3人で15分あればだいたいのことは決まります。決まらないのであれば、判断材料が足りないか、そもそもまだ意思決定するべき時期ではないか、メンバーの睡眠時間が足りてないかのいずれかであることが多く、材料が揃った段階で仕切りなおしたほうが良かったりします。

3.事前のアジェンダ共有によって、個人の思考を成熟させる

組織の意思決定というのは、最終的には個人が導き出した意志決定の集合体です。意思決定に影響を与えるものは、まず第一に判断材料となる情報量ですが、それに加えて適切な「時間」というものが必要だと思っています。瞬時に何が適切かを見極められるカリスマ集団の組織ならばいいのですが、残念ながら普通はそういったことはあり得ません。Labitでは毎朝10時から10分間ほどの朝会を実施していますが、各メンバーが意思決定すべき議題があった場合、そこで事前に報告をします。3時間後に行うミーティングの簡単なアジェンダをその場で発表することで、担当する個々人がその問題に対して一人で向き合う時間を作り、思考を成熟させることを目的としています。まったく何もない段階でいきなり議論をはじめるよりも、数時間前に事前にアジェンダを共有することで、意思決定のスピードアップに繋がりました。

4.意思決定のベースにあるのは、信頼関係と個々が尊敬しあう雰囲気

信頼関係という言葉の裏には、「尊敬」という言葉が隠れているように思えます。本気で尊敬しあえる関係性であれは、そこには信頼関係が生まれています。上記の工夫を実現していくためには、メンバー間の信頼関係の構築、尊敬し合う空気作りというものが前提として必要かもしれません。それ無しでは、いくら仕組みづくりを急いでも、意思決定のスピードアップと質の向上の実現は難しいかもしれません。

スタートアップというのは、少人数で大きな仕事を成し遂げようとする組織です。少人数精鋭のため、一人あたりに求められるスキルやスペックは必然的に高くなり、専門知識に加えて多様性も求められるのが現実です。一人ひとりが重要な役割を持っている組織ですから、組織を構成するメンバー全員が網の目のように尊敬し合う雰囲気というものが必要不可欠です。責任は個人ではなくチームにあるという考え方や、個人の能力を補完しあったり、業務進捗の透明性を担保していくような社内の仕組みが求められます。

ベンチャー企業の場合、ひとつひとつの意思決定が重要なので慎重にやるべきだとは思うのですが、慎重になりすぎて意思決定を先延ばしにし、結局何もできなかったという最悪な状況を回避することが必須だと思います。「少人数だから仕組み化は後回しでもいい」というのは経営者の現実逃避であり、少人数だからこそ、その強みを伸ばすためのより良い仕組み化を推進していく必要があると思っています。

※ Labitでは、一緒に価値あるものを作っていくメンバーを募集しています

Original Page: http://www.mocchiblog.com/?p=8024

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