2012年6月4日月曜日

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メディア運営に必要なソロバン計算―PVを軸にしたKPI構造の把握

advertimes.com | Nov 30th -0001

さて、今回はメディア運営のエコノミクス(事業運営に関する計数構造)の話です。特にウェブメディアは、「ページビュー」という指標がほぼそのまま「通貨」になるような共通概念となってしまっているので、メディア編集者にとっても、事業全体の運営について数値に基づいたビジネス感覚を持つことが大変重要になってきます。より具体的にいうならば、追加で「1ページビュー獲得するために、何円のコストをかけられるのか?」ということについて、プロの(ウェブ)編集者ならば、必ず意識すべき基本姿勢になります。

私が愛読する「創刊男の仕事術」を書かれた、リクルートの大先輩である、くらたまなぶさん流に言うならば、メディアの立ち上げに必要なのは、「ロマンとソロバン」だそうですが、今回のコラムは、ソロバンに関する話です。

メディア運営もビジネスですから、得られる売上が費用を長期的に、上回っていくことができなければ、必ず継続不能になってしまいます。当たり前ですが、あらゆるビジネスは、より安い費用で、より高く売れるアウトプット(成果物)を出すことが求められます。例えば、コメ農家ならば作ったお米の重さ(トンorキログラム)で、自動車メーカーなら生産台数、飲食店なら来店客数などが、そういった基本指標になるでしょう。現状では、ウェブ上のメディアでは、ページビュー(以下、PVと記載)がそういった基本指標になります。(このPV至上主義的な価値観に基づく行動スタイルが、そもそも編集者の矜持として本当に正しいことなのか?将来においても本当に経済合理的であり続けるのか?どうかについては、筆者にも色々と思うところはあるのですが、ビジネスの「現実」である以上、無視はできません。全肯定し未来永劫にわたって受け入れ続ける必要もないですが、まずは、業界の現状であり、我々が立っている出発点であるわけですから、よくよく理解しておく必要があります)

ウェブメディアにおける売上が、ビジネス構造としてどのようにもたらされるか? 現場で働く編集者や営業マンの「思い」や「汗」「努力」といったものを脇において、メディア全体を、日々、チャリンチャリンと売上を生み出すマシーンのような目線から捉え、様々な歯車が組み合わさったもののように把握する観点から捉えれば、筆者としては下記のように捉えています。(下記のような構造は、VOGUEのような超プレミアム型のファッションサイトから、2chまとめブログのようなものでも同じフレームで適用可能だと思っています)

上記の箱ひとつひとつがいわゆるKPI(Key Performance Indicator)と言われるものになり、多くのウェブメディア企業では日々の定例ミーティングなどでチェックされている項目になっているはずです。

さて、ここで大事なことはKPIの数値を見るだけでなく、その意味について、考え、具体的な状況に基づいてその増減理由を納得し、改善のために具体的な行動に移していくことです。上記の数値、一個一個は、人間ドックの診断結果のようなものです。数値を見るだけ、知っておくだけ、では全く意味がないのです。

あるメディアの売上が前年比で50%伸びたとしましょう。その原因が、例えばTwitterやFacebookでのフォロワーやファンが激増し、投稿の頻度も増やしたことで、上記の図でいう「ソーシャル流入」が増え、その結果としてUUが増え、売上拡大が上手くいったケース(しかし、それ以外の上記のKPI数値は全く変わらず向上していないケース。)や、同じ売上50%増でも、敏腕スゴ腕の営業部長が入社し、リッチ広告の販売が拡大したことで「PVあたり売上」の水準が2倍に上昇し、PVは実は25%減少しているのだけど、結果的に売上は50%の拡大となったケースなど、様々な状況が実は考えられます。ウェブメディアの編集的な観点からは、対処すべき観点が全く違ってきます。

少なくとも編集責任者・事業責任者クラスにおいては、上記のようなロジックツリー構造に基づいて、メディア全体の売上やPVの増減要因について、コンサル用語でいうMECE(Mutually Exclusive and Collectively:つまりモレなく、ダブリもなく)に「因数分解」した構造が、頭の中に持っておくことが重要です。

さらに実務的には、それぞれのKPI間でのトレードオフの関係を把握しておくことが重要です。例えば、最近、いろんなサイトでありがちな状況なのですが、FacebookやTwitterなどからの「ソーシャル流入」が大きく増えると、その代わりに「UUあたりPV」が減少する傾向が存在します。

ソーシャルメディアで口コミ喚起力が強い記事を掲載し、RTやシェアをユーザーに促すことで、爆発的にサイト流入を増やそうということ自体は悪い戦略ではありません。しかし、ソーシャルでバズが爆発する記事というのは、見出しや写真・動画などのインパクトが非常に強く、その吸引力に「釣られて」やってきたユーザーを大量にサイトにもたらすのですが、その記事のみを読んで、さっさとユーザーは帰ってしまう(アクセス解析的にいうと、当該記事の直帰率が80~90%以上と非常に高い)状況になりがちです。

飲食店に例えると、TVで紹介されて一見のお客さんがドカンと増えたが、単品メニューばかりを注文されてしまい、客単価が下がってしまった・・・そんな状況でしょうかね。

こういう場合では、新規客の流入増加は、十分な状況なわけですからその副作用を軽減させる打ち手を取るべき状況です。よくある手段としては、記事下に類似の関連記事のリンク紹介などを埋め、その「記事のみ」を見る(=「UUあたりPVが1」)の状況から抜け出ることを狙ったりします。

また、KPI間のトレードオフ関係だけでなく、長期的にしか改善できない項目と、短期的にも改善可能な項目の区分も、特に事業責任者にとっては重要な観点です。上記のKPIで、短期的(1カ月~3カ月以内くらい)に向上させることが期待可能な項目は、筆者の考えでは以下の3つになります。

「PVあたり売上」は、いわゆる広告セールス陣の「営業努力」や「広告商品の改善(=リッチ化やターゲティング化)」によって、「UUあたり売上」はサイトのUIの改善(ベタな打ち手はページ分割や写真スライドショウの導入・強化)によって、「ソーシャル流入」はTwitterやFacebook運用において、投稿頻度を増やしたり、見出しを工夫したりするなどの担当スタッフの努力によって、改善を期待できます。

その逆に、長期的(半年以上のスパン)でしか、大きな改善が期待できないものの代表が(オーガニックなSEO観点からの)「検索流入」です。検索エンジンからの流入拡大に向けた打ち手は、常にジワジワとしか効果を発揮しないのですが、その代わりに、一旦、増えた検索流入は、すぐに減少するということも考えにくい、言わば「座布団」のように、常にサイトのアクセスを下支えしてくれる存在になりますから、やはり大変に重要な項目です。
(やや、余談ですが、筆者は、アクセスが増えたり減ったりして、色々と思い悩むときには、グーグルアナリティクスなどで、検索流入のグラフを見て、「安心」し、「よし俺達のやってきたことは間違っていないのだ」という「自信」を取り戻すことが、しばしばありました。検索流入のグラフが長期的に一貫して、右肩上がりのトレンドを描いているのならば、そのサイトのページビューのグラフはジグザグしながらも、徐々に下値を切り上げ、上昇を続ける株価のようなチャートを描いていくことが多いです。逆に、検索流入が長期的に一貫して下降トレンドに入っているならば、これは大変に不健全な事態です)

言い換えるならば、検索エンジンからの流入アクセス数というのは、ウェブサイトにとっては非常に「資産性」が高く、長期的な岩盤となるようなアクセスなのです。これはウェブメディアを運営するネットベンチャーへの企業投資やM&Aなどの観点からも、デューデリジェンスなどで気にされる項目でしょう。(検索アクセスの流入比率が高いサイトというのは、例えば、ちょっと嫌な言い方ですが、サイト買収後に、運営方針をめぐって対立が発生し、編集スタッフが全部辞めてしまった・・・というようなケースでも、アクセスが大幅に減少するリスクが少ないのです)

さて、ここまで主に売上面からのPV拡大について話して来ました。
日常の編集業務では、主に費用面からの観点も多いでしょうから、費用面についても、基本的なモニタリングの観点をお伝えしたいと思います。
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編集オペレーションの実際では、直接に「PV」を意識することはできません。PVは常に事後的に生み出されるものなので、記事を公開する前には、全くグリップ不可能な数値だからです。そこで、日常的なオペレーションでは、記事の「本数」が生産性を把握する基本単位になります。

そして、記事の一本一本にかかった費用と、記事の一本一本が生み出したPVを、自分達の担当するサイトを構成するカテゴリー要素(ニュースサイトならば、「政治・経済」や「芸能」「スポーツ」)ごとに把握したり、情報の仕入先である外部ライターや、社外の情報提供元(通信社などニュースベンダー)の発注単位ごとに把握していきます。

紙メディアの編集業界では、文字量ごとに、なんとなく原稿料の相場がありました。しかしネットメディアになり、「PV」が通貨のような価値を持ってしまう現状では、下記のような状況が起こりえてしまうのです。

●1記事5万円だけど、内容が凄く刺激的でいつも、ソーシャル中心にバズが巻き起こるので1本平均で50万PVも獲得できるライターのAさん
⇒PV獲得コスト=0.1円(5万円÷50万PV)

●1記事3000円だけど、独自性の少ないネタを、リリース起こしで書くので1本平均1万PVしか読まれないライターのBさん
⇒PV獲得コスト=0.3円(3000円÷1万PV)

ウェブメディアにおいては、上記の比較では、1本あたりのギャラでBさんの20倍近くを取る、ライターAさんのほうが「安い」のです。ウェブメディアの編集者ならば、AさんとBさんのどちらを重用すべきか、といえば明らかにライターAさんでしょう。こういう背景に基づいて、フリーライターさんにも「格差社会」がやってくるのかもしれません・・・。(なお、上記の費用には、当然のことながら、PVの増減に関係なく発生してくる、サーバー費用や社員編集者の人件費などの固定費用を含めるべきではありません。シンプルに実行するためには、直接に紐付いた発注金額(=キャッシュアウト額)だけで十分でしょう。本稿は管理会計の話題は対象スコープではないので、コレ以上は踏み込みませんが、メディア事業向けの管理会計というのは、もっと研究されてよいテーマだと思います。例えばサーバー費用を固定費と見るべきかどうかは、このクラウド時代に大いに議論のある論点だと思います)

また、トラフィック分析においても、いわゆる「20対80の法則」が当てはまるケースが非常に多いです。往々にして、上位10〜20%の記事が、大多数(=80%)のアクセスを生み出しているわけです。こういう場合、ウェブメディアの編集責任者は、自分のサイトの中でどの部分が、スイートスポットの上位20%にあたるのか、ぜひ把握せねばなりませんし、日頃の改善努力も集中的にそこに注ぎ込む必要があります。

これまで売上と費用について話をしてまいりました。そして、最後に「利益の最大化」を求められるメディア事業責任者の立場で言えば、究極的には働きかけるべき項目は、下記の3つになります。

ウェブメディア事業の利益
=(「PVあたり売上」−「PVあたり費用」)×「全体PV」

(ゲームやECのように、よりユーザー・べースで把握すべき事業の場合は、上記のPVがユーザーに置換される)

つまり、できるだけ多くのPVを、できだけ安い費用で稼ぎ、できる限り高い効率でマネタイズする。身も蓋もないシンプルな話になります。

編集者らしい編集者の方は、今回のコラムで触れたように「定量化」し「構造化」されたKPIに基づいて、プロセスについてPDCAのサイクルを回していくといいうこと自体、あまり好まれない方が多いようですが、営利事業としてメディア運営を拡大・継続していく上では、この観点は決して逃れられません。数字に強く、抜け目のない感覚を発揮することに支えられた高収益メディアには、それだけ編集コストの負担力もますわけですし、イベントや交通広告などを打つ余力も出てくるでしょう。

編集者の方にも響くように、文学的に、ドストエフスキーの言葉を引用してしめくくりましょう。

かのロシアの文豪が言うには「貨幣とは鋳造された自由である。」

つまり、稼げるメディアは、それだけ自由なメディア足り得るのです。
編集者の皆さん、ロマンを忘れないようにしながらも大いにソロバンを弾き、稼ぎ、儲けましょう!

さて、皆様にお知らせしたいことがあります。筆者は、この6月1日より、NHN Japan株式会社に入社し、執行役員 広告事業グループ長を拝命することとなりました。メディア・ビジネスの主戦場がデジタルへと移行していく中で、編集・広告セールスの両面からその水準向上に努力してまいりますので、どうかよろしくお願いします。

Original Page: http://www.advertimes.com/20120604/article69914/

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