リスティング広告のレポートをまじめに考える ~ admarketech.
admarketech.com | Nov 30th -0001レポートこわい
広告代理店の月初の最初の1週間というのは、その取扱いのアカウント数が多ければ多いほど、レポートの作成に忙殺されます。その週はレポート作成作業しかしていない、なんてこともつい数年前までは当たり前の光景でした。(最近は各社工夫して自動化したりしているので、以前ほどではないかもしれません)
仮に1ヶ月のうち最初の1週間をレポート作業に費やすとすると、リスティング広告の全仕事量のうち2割以上はレポート、つまり報告業務に費やされていることになります。また、レポートは月1回とは限らず、毎週、時には毎日という場合もあるかもしれません。2割どころか半分がレポート作業なんてことも笑い話でなく現実としてあるのではないでしょうか。また、自動化と一口に言っても、広告主が知りたいことは多岐に渡り、パッケージ化された共通のレポートフォーマットだけではなく、カスタマイズした独自のレポートを作成しないといけませんし、レポートを出すことが目的なのではなく、そこから変化を読み取り、次の施策に繋げていかないと代理店の存在価値が広告主から疑問視されかねないので、レポート作業は本来、分析や次回提案に向けてのアイデアを練る作業でもあるはずです。
とはいえ、よほど大規模な案件の担当者でない限り、どうしても1人で複数の案件を運用することになるため、すべての進捗を確認し、レポートを作成し、そのたびにアイデアを練り、トライアンドエラーを繰り返し、検証と報告を繰り返すというPDCAサイクルを回すのは時間的に難しく、どうしてもレポートは流れ作業で数字の報告に終始してしまうということが多いのもまた現実だと思います。
Acquisioのレポートのレポート
Best Practices in PPC Reporting(PDF)
※SMNだとダウンロード前に個人情報を求められるのですが、こちらからだとフリーダウンロードできます。
同資料では、リスティング広告のレポートについて以下の7つの項目に分類しています。
順を追って紹介します。
1. あらかじめレポートの方針を決める(Establish Reporting Strategies Upfront)
資料では、冒頭を以下のように伝えています。
おそらく、リスティング広告のレポートでもっとも大事なことは、レポートの方針、フォーマット、頻度、トラッキングの仕組み、成果指標、説明責任、連絡手段や伝え方などを明確に定義し、プランに落としこむことだ。
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Perhaps the most critical factor in PPC reporting success is to have a plan that clearly defines the reporting strategy, format, frequency, tracking mechanisms, metrics, accountability and the communication chain of command.
提案や運用に従事するチームの努力が、広告主の目的と一致していることが幸せな案件への必要条件だと思います。上記の作業が必要な理由として、「ときどきあるタスクが他の作業に大きな影響を及ぼし、それが積み重なって意味のない報告やルーチンワークに発展することがあるから」だと書いています。うーん、確かに思い当たりますね。思いつきで頼まれたものが思った以上に複雑な作業を必要とするものだったり、しかもそれが不要になったあとでも惰性で出し続けてしまうなんてこと、よくあります。
合わせて、「広告主の要求レベルを適切にマネジメントせよ」とも書かれています。一見レポートに関係ないように思いますが、要求の一つ一つは報告業務にそのまま反映されることを忘れてはいけません。決して細部を見過ごさず、それらに潜む作業の連鎖に想像を巡らせることがフロントマンの勤めだとも書いてあります。営業(AE)はレポートを自分で作らないことが多いですから、ついつい謎のリクエストを二つ返事で受けてしまいがちです。
とにかく、目的を明確化し、それが十全に網羅されているレポートフォーマットや頻度や連絡手段を整備しましょうということですね。
2. レポートチームを組織する(Organize Staff for Success)
SEM関係のツールを有効に使えとも書いてあります。ビッドマネジメント系の自動化ツールにはじまり、ディスプレイ広告の進化によってリスティングに限らないキャンペーンの全体マネジメントをするツールも出てきていますし、アクセス解析やレポートの自動化ツールもあります。
最後に、検索エンジンやサードパーティのツールベンダーの担当者も使えと書いてあります。つまりGoogle やAdobe の営業担当を使えということですね(笑)
実際、マーケット全体のデータや傾向はプラットフォーム側の方が圧倒的に情報量は多いですし、大きな広告主でしたら彼らにも担当者がついている可能性がありますので、連携することでレポートや提案のためのいいコラボレーションが生まれることがあると思います。
3. 透明性を確保する(Create Transparency)
広告主に対して "オープンドアポリシー" で臨むことは、広告主が気軽にレポートや分析結果に対して質問し、自身がそれに答えることによって自信を生み出し、良い関係の促進することにつながる。
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Having an "open-door policy" with clients fosters a culture of conversation where clients feel free to ask questions about your reporting and analysis and you feel more confident about your answers.
本文では、いくつかのステップを提示しています。
まずは、小さな成功を早めに確保すること。広告文の一部を変えただけでアカウントのパフォーマンスを改善させたりなんてことでもOKなので、とにかく小さくていいので良い結果を早めに出すこと。次いで、頻繁に連絡をとること。連絡が頻繁なのは最初だけでだんだん疎遠になっていく担当者が多いですが、頻繁な連絡はそれだけでケアされているという安心感を与えるものです。その後、パフォーマンスだけでなくレポートでも、数字の羅列ではなく的を得たコメントや質問に対して迅速で的確なフィードバックを行うことが何より大事だそうです。
また、何より大切なのはクライアントからのフィードバックを恐れないこと、そして現状に居着かず、よい結果を求めてテストを繰り返すことだと説いています。オープンドア!
4. データを見せるのではなく、分析する(Stop Presenting Data; Start Analyzing It)
まず冒頭で、「SEMの従事者がもっとも犯しやすい間違いは、キーワードレポートをエクセルに丸写しして提出し、その分析を怠ることだ」と戒めています。耳が痛いですね。
レポートは宝の山で、レポートの分析に時間を割かず作成に時間を割くことは、アカウントの大事な情報を見落とし機会損失に繋がるので、必ず分析の時間を割き、専門用語ではなくわかりやすい言葉でレポートに記載し、クライアントとそれについてしっかり会話すること。
予算設定とキャンペーンの中身を吟味し、時系列に沿って分析することは、市況の変化や表示機会の抑制を発見することにつながりますし、広告グループやキーワードの実績を分析することは、ウェブサイトとキーワード、広告文の結びつきが、ユーザーと企業の結びつきに直結することを数字だけでなく実感として理解することにつながります。
そして、「データの分析を人任せにするな」とも書いてあります。ああ耳が痛い。。。
5. 細かく、深く(Go Granular; Dig Deep)
- アカウント開設からこれまでの経過
- 日次、週次、月次での平均の予算進捗
- 上位のキーワードのボリューム
- 上位のキャンペーン、広告グループ
- 重要指標のCPCや平均順位
- 過去のコンバージョン推移やCPA、カウントのルール
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これはケースバイケースだと思いますが、アカウントの大きさに合わせ、頻度と粒度は変えるべきですね。一方で、最低でも週に1度はレポートしたい、と書いてあります。
6. 最適なレポート頻度を決める(Establish the Right Report Frequency)おそらく、何をレポートするか、が頻度にも関係していくのだと思います。予算の進捗やROIはなるべく高頻度でモニタリングしたいですが、分析を要するキャンペーンや広告グループ、キーワードやクリエイティブ、チャネルやデバイスなどはある程度量や時系列のデータがないと意味をなしませんので、何をいつレポートするのかが、最初の「1. あらかじめレポートの方針を決める」で言及している「プラン」につながってくるのだと思います。
だからリソース的に無理なんですと言われればそれまでなのですが、明らかにテンプレートにはめ込んだだけでインサイトのないレポートではダメな一方で、1から10までフルカスタマイズなレポートはすぐに破綻します。ここでは、「ある程度までツールなどで自動化・テンプレート化し、クライアントの目標や要求に沿って必要なだけカスタマイズの部分を作ろう」と提案しています。
7. クライアントごとにカスタマイズする(Customize For Every Client)レポートは終わらない
Acquisioのレポートは上記の7つのポイントにとどまらず、エクセルの実用的な使い方や、AdWordsの効果的なレポート、キーワードレポートのケーススタディと続きますが、普段からSEMに従事していらっしゃる方であれば既知の内容が多いので割愛します。(ちなみに、AdWordsの効果的なレポートは、SEM-LABOさんのこの記事がとても参考になりますので併せてどうぞ。)冒頭で書いたとおり、Acquisioのレポートを読んだからといって日々のレポート業務に何か劇的な変化が起こるわけではありません。ただ、いい事言ってるなと思ったのは、「1. あらかじめレポートの方針を決める」でも触れた以下の部分です。
おそらく、リスティング広告のレポートでもっとも大事なことは、レポートの方針、フォーマット、頻度、トラッキングの仕組み、成果指標、説明責任、連絡手段や伝え方などを明確に定義し、プランに落としこむことだ。
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Perhaps the most critical factor in PPC reporting success is to have a plan that clearly defines the reporting strategy, format, frequency, tracking mechanisms, metrics, accountability and the communication chain of command.
これは、レポート業務に留まらず、リスティング広告の業務全体をデザインすることだなーと思いました。リスティング広告に限らず広告業務の現場では、よく営業と運用、アカウントマネージャーやプランナー、アナリストとそれぞれの間の意思疎通がうまくいかず、ギクシャクしたり妙に仕事が増えたりすることがあります。営業はクライアントの要望をかなえてあげたいし(もしくは断りきれないし)、運用スタッフやアナリストからすると営業の安請け合いがどれだけ業務的に負担になるか文句のひとつも言いたい時があると思います。そういったことを未然に防ぎ、チームが一丸となって顧客と共通の目標に向かって仕事を進めるための環境整備が、レポートの設計につながってくるのだと、何となくそんなことを思いました。
一方で、日々の業務に忙殺されてレポートがないがしろというケースもまだまだあると思います。デジタルマーケティングがますます複雑化していき、APIとCookieでいろんなものがつながっていく中、レポートの重要性は増すばかりです。面倒な作業と忌み嫌わず、改めてまじめにレポートと向き合ってみると何か見えてくるかもしれませんね!
Original Page: http://www.admarketech.com/2012/01/blog-post.html
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