知で知を洗うネットマーケティング最前線
itpro.nikkeibp.co.jp | Nov 30th -0001本連載は、2010年7月から日経情報ストラテジーに掲載されたものです。2012年の現在でも通用するヒントを含んでいるため転載します。
テレビや新聞などオフラインの広告と同様、オンライン広告にも代理店があり、コンテンツの制作や媒体の選定、出稿などの実業務を担っている。当社もその1つだ。
リスティング広告を検討するに当たって、複数の代理店を呼んでコンペをする企業は多い。そういう場に呼ばれた際に戸惑うのが、出稿するキーワードや広告文について「具体的な」提案やコストの試算を求められることだ。「こんな検索キーワードを使えばクリックが増える」「その場合の費用対効果はこの程度」といった提案がほしいというわけだ。
しかしこうした作業は、一定の知識と経験を持った人間がやればアウトプットにほとんど差は出ない。費用対効果が飛躍的に高い魔法のキーワードはめったに見つからない。
具体的な提案を求める依頼主に共通するのは、バナー広告に代表される「ディスプレー型」の広告と混同していることだ。ディスプレー広告には商品やサービスの認知を広め、需要を創出する効果が期待されることが多い。だから「誰に対して」「どのような形でメッセージを伝えるか」といったコンテンツに関する具体的な提案内容が、代理店の選定基準となる。PDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクルでいえば、PとDを重視している。
これに対して投資対効果を明確に測定できるリスティング広告の場合は、CとAがポイントとなる。具体的にいえば、広告の掲載結果と、期待する目標との間に乖離が生じた際に、どのように察知し、問題を解決するかを重視する。
こうした視点でコンペを行うには、依頼主自身が事前に目標や成果測定法を明確に定義し、RFP(提案依頼書)に盛り込む必要がある。例えば受注などの成果(コンバージョン)について数値目標を定めて、「どの程度の頻度で進捗をチェックするか」「依頼主にどのような報告や提案を行うか」といったポイントで代理店の対応を比較する。提案力ではなく、運用力を問うわけだ。
しかし筆者の経験では、リスティング広告についての知識と経験が不足し、ディスプレー広告の習慣を引きずったまま、コンペに臨む依頼主が多い。こうした依頼主には、出稿キーワードや広告文に関する「事前承認」を求める傾向も強い。掲載前から「このキーワードは効果が薄いのではないか」といった主観的な意見をもとに削除や変更を要請したり、細かなチューニングにも事前の承認を求めたりする。こうなると、承認に時間がかかってタイムリーな対策が打てなくなってしまう。
リスティング広告の特性を理解しないと、厳重に管理をしているつもりが、かえって成果の創出を妨げ、自身の首を絞めることにもなる。

Original Page: http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20120305/384546/
Shared from Read It Later
Sent from my iPad