2012年8月27日月曜日

スタバ、アマゾンも!成功のキーワードは「小さく賭けろ!」

スタバ、アマゾンも!成功のキーワードは「小さく賭けろ!」

itpro.nikkeibp.co.jp | Nov 30th -0001
小さく賭けろ!――世界を変えた人と組織の成功の秘密』 (ピーター・シムズ 著、滑川 海彦/高橋 信夫 訳)好評発売中!グーグル、ピクサー、アマゾン、スターバックス、P&G、グラミン 銀行など成功した人や組織の事例が満載。公式Facebookページはこちら

 素晴らしいサービスや製品を生み出して成功をつかむために、一番大事なものは何だろうか?「すごいアイデア」を発見することだろうか、過去の成功事例を分析することだろうか、天才を呼んでくることだろうか――。

 ベンチャー・キャピタリストとしてシリコンバレーの数多くの起業家の成功と失敗を見てきた経験を持ち、『小さく賭けろ!』を著したピーター・シムズ氏は、これらのどれもが違うと言う。シムズ氏は、「成功の秘訣は、小さく賭けて、素早い失敗、素早い学習を繰り返すこと」だという。「小さく賭ける」とはどういうことなのか、なぜ今必要になっているのか、本書の担当編集者が事例を基に紹介する。

 社運をかけた新規プロジェクトの責任者に抜擢されたら、あなたはどう考えるだろうか? 期待をかけられてやる気が出る人、「ここで失敗するわけにはいかない」とプレッシャーを感じる人が多いかもしれない。

 では、どう行動するだろうか。慎重でまじめな人なら、競合する製品やサービスの状況を調査したり、ユーザーに意見を聞いたりするだろう。過去の失敗を繰り返さないようにしようと、社内外の事例を調べる。そして、これらの情報を基に綿密な計画を立てて、実行に移そうとする。

 少し前なら、この行動は非の打ちどころのない正しい仕事の進め方だ。しかし、ピーター・シムズ氏は、「重要な事実が忘れられている。われわれが予測しようと試みる事柄の多くは、本質的に予測不可能なのだ。予測の基礎となるべき世界の市場動向、政治や文化、ターゲットとなる消費者層は常に変化を続けている」と言う。IT業界はもちろん、どんな分野でも競合が相次ぎ登場して、画期的な製品をどんどん出していく。そして、ユーザーの好みも細分化し、移り変わっていく。過去の大成功の経験は、あっという間に参考にならなくなってしまう。「大成功を狙おう」「失敗を防ごう」と"大きな賭け"に向けてまじめに過去のデータや経験を基に計画を練っている間に、時代は急速に移り変わって行く。つまり、過去の成功体験を基に慎重に時間をかけて準備する「大きな賭け」方式では、もはや成功できないのである。

GMとHPのベテランが語った「大きな賭け」

 「大きな賭け」のやり方で窮地に陥った例として、ピーター・シムズ氏はGMとHPの例を紹介している。GMで37年間働き、子会社のCEO(最高経営責任者)を務めたチェット・フーバー氏が、GMが計画過剰で見動きが取れない状態になっていたことを語っている。

 新しい車を開発している過程で、何か問題を見逃していやしないか、このグループからも何か有益な意見が得られるんじゃないか、と関連する部署をひとつ追加する。ミスを防ぎたいというのが動機なんだ。GMの歴史100年で蓄積されたノウハウは膨大なものだ。そうした知識、経験をテンプレート化して開発過程からミスを根絶しようとしていた。ところが過去の経験から業務をテンプレート化し、リスクを減らそうとしたまさにその努力が、GMを窒息させ創造性を奪ってしまったのだ。

――「はじめに」から

 GMのやり方は、過去にヒットした製品のデザインや製法が今も人気ならうまく行ったかもしれない。しかし、繰り返しになるが、時代は速く動いている。リスクを減らそうと過去のやり方を盛り込むほど、製品化のスピードが遅くなり、結果として競合から取り残されてしまったのだ。

 もう1つ、「大きな賭け」の例としてピーター・シムズが紹介しているのは、1990年代のHPだ。

 当初はベンチャー企業として素早い行動をしていたものの、90年代には売り上げ300億ドル(約2兆4000億円)の巨大企業になり、大きな成功を狙ってスピードが遅くなっていた。30年以上HPで勤務し、子会社のCEOを務めたネッド・バーンホルト氏はこう語っている。

 当時私の同僚たちは皆、「最低でも10億ドル(約800億円)規模になるビジネスでなければ検討する価値はない」と言っていた。10億ドル、10億ドルと、何かの呪文のように唱えていたね。(中略)全部巨大プロジェクトだった。ところがわれわれは、どれひとつ成功できなかった。なぜわれわれが失敗したのかというと、それがビッグな市場だったからだ。ビッグな市場であるということは、すでにそこに誰かがいるということ。(中略)というわけで、私は小さな賭けを数多くすることの重要性を学んだんだ。

――「はじめに」から

当初のスターバックスには椅子がなかった

 では逆に、「小さく賭ける」とはどういうことだろうか。それは、小規模な試行錯誤を繰り返すということ。今では世界規模で展開するスターバックスも、小さく賭けて、素早く失敗、素早い学習を繰り返してきた企業だ。

 ハワード・シュルツがスターバックスの前身の店を始めた時、バリスタは蝶ネクタイを締め、バックには絶えずオペラが流れ、店には椅子がなかった。「われわれは多くの過ちを犯した」とシュルツは何度も告白する。シュルツと彼のチームは、ほかの数え切れない実験がそうだったように、過ちから学びとった。

――「第9章」から

 シュルツがイタリアのバールを真似て作った店はユニークだったが、客からはオペラがうるさいとか、椅子がないので落ち着けないとかいった苦情が相次いだ。こうした客からの評判を基に修正と改良を重ねて、居心地のよい今のスターバックス店舗が生まれたのである。シュルツが当初作ったような店は世の中に存在しなかったから、過去のコーヒーショップの事例をいくら研究して計画を練ってもムダだっただろう。そうであれば、限られた店舗で素早く実行してみたほうがよい。失敗してもリスクは小さいし、机上で計画を練っているよりも、正しい方向に軌道修正ができるからだ。

アマゾンのベゾス曰く、「表計算ソフトでユーザーの反応は予想できない」

 ハワード・シュルツ以上に小さく賭けてきたのが、アマゾンのジェフ・ベゾスCEOだ。アマゾンを創立し、総合ECサイトとして成功しただけでなく、キンドル端末の販売、クラウドサービス事業でも大成功を収めている。これほどの成功ぶりを目の当たりにすると、失敗など何もなかったように思えてしまうが、決してそんなことはない。アマゾンでは、どのアイデアが有効かを調べるために、まず実際にやってみる。この結果、ユーザーに受け入れられなかった機能についてベゾスは、こう言っている。

 ところが誰もこの機能を使わなかった。アマゾンにはこういう例が山ほどある。われわれはクールなイノベーションだと思って提供するんだが、顧客は見向きもしない。(中略)表計算ソフトにいくら数字を入れてみたところで、現実の人間が新製品に対してどういう反応を示すか予想できっこない。

――「はじめに」より

 もちろん、慎重になることも、周到な準備や計画をすることも、決して悪いことではない。しかしそれ以上に、不確実な現代で成功するには、「素早く動いて、素早く学習することが重要だ」と頭を切り替える必要があるだろう。

Original Page: http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20120808/415107/

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