2012年3月19日月曜日

企業内にソーシャルの仕組みを 〜 エンタープライズ・ソーシャルネットワーク導入の要諦 in the looop 斉藤徹

企業内にソーシャルの仕組みを 〜 エンタープライズ・ソーシャルネットワーク導入の要諦 in the looop 斉藤徹

media.looops.net | Nov 30th -0001

企業内の閉じられた空間でソーシャル・ネットワークを活用する「エンタープライズ・ソーシャルネットワーク」は、これから注目されるべき分野だろう。米国調査会社であるガートナーの調査 (関連記事) によると、2010年の推定市場規模は6.6億ドル(前年比115%)、2011年は7.7億ドル(前年比116%)。消費者向け市場と比較すると堅調な伸びではあるが、着実な成長が見込まれている。

一方で、去年末に発表された「ガートナー2012年予測 〜 Gartner Predicts 2012」では「2013年に消費者向けソーシャル・ネットワークへの投資バブルが、2014年にはエンタープライズ・ソーシャル・ソフトウェア・ベンダーへの投資バブルがはじける」と警告。エンタープライズ市場において、今後はMicrosoft、IBM、Oracle、Google、VMwareなどのメガベンダーが本格進出すると予想している。

最近よくいただくのが「生活者と本格交流する前に、社内の縦割り組織の弊害をなくし、部門を超えたコラボレーションを促したい」という声だ。特に生活者との接点が少ないB2B企業にとっては現実的な選択肢だろう。では、国内で社内ソーシャル化を目指す場合には、どのような目的で、どのようなツールを選択し、どのように活性化していけば良いのか。米国調査会社であるAltimeterから発表された「Making the Business Case for Enterprise Social Networks」(20121/2/22) を参考にしながら、導入のポイントやツール選択についてまとめてみた。

なお、一般的なソーシャルネットワークとエンタープライズ・ソーシャルネットワークの違いについては、Altimeterがまとめた表を参考にしてほしい。

社内ソーシャル活用の目的は?

社内でソーシャルネットワークを活用する目的はなんだろうか。さまざまな効用があるが、次の4点に集約されると考えている。

  1.  部門を壁を超えた情報共有で、コラボレーションやイノベーションを促す
    部門を横断した情報共有で、社員の交流やノウハウの共有を実現する。適時、イベントも実施、コラボレーションとイノベーションを促す。 
  2.  社員の持つナレッジを蓄積し、再利用する
    社内での知識や経験、提案書やドキュメントなどを蓄積し、再利用する。また社内の特定分野における専門家が発見され、その情報が共有される。
  3.  全社員のソーシャルリテラシーを高める
    ソーシャルメディア時代において、社員の無知や無体験は最大のリスクとなる。クローズされた安全な空間で社内ソーシャルリテラシーを高める。
  4.  社員を大切にする経営のプラットフォームとする
    社員を大切にする経営にするために、社員の発言場所を提供し、社員の声を傾聴する。経営者の想いもダイレクトに社員に伝えられる。

Altimeterの調査では、実際に活用してる44社(250名)を対象として、ソーシャル・エンタープライズ導入におけるゴールで重要なものは何か、その回答結果をグラフ化している。

ゴールのトップ3は「ベストプラクティスの共有」「部門間を超えたコラボレーション」「社員の協働や情報共有の改善」だった。またAltimeterは、エンタープライズ・ソーシャルネットワーク活用がもたらすビジネスバリューを (1)情報共有の促進する (2)社内知識を記録する (3)行動を促す (4)社員をエンパワーする の4つにがあるとしている。

エンタープライズ・ソーシャルネットワークにはどんなツールが?

この分野にはすでにさまざまなツールが存在している。Facebookのようなパブリックなソーシャルネットワークのグループを社内で活用するオープンなスタイルから、社内でクローズして利用できるクラウドサービス、利用端末のIP制限ができるサービス、さらには社内サーバーにインストールするタイプまで様々だ。ループスには社内ソーシャルネットワークを開発導入した実績が多数あり、この分野のツールに精通している。現時点で、日本語環境で活用できる主要ツールの価格や機能、対応機種などを表にまとめてみた。

ツール選定のポイントは、(1)投稿したくなるユーザーインターフェース (2)グループウェア機能の有無 (3)セキュリティの堅牢性 (4)予算規模 の4点だ。ただし情報システム部門が主導してセキュリティ過剰になると、ソーシャルの持ち味が生かせず、ほとんどのケースで失敗に終わるので注意してほしい。また、社内ナレッジの共有という意味では (5)検索機能 が極めて重要になってくる。その点ではGoogle+ が圧倒的な優位性を持っているのだが、現時点でクローズしたサークルに対応していないため対象としていない。

なお、Altimeterの調査におけるツールのシェアは次の通り。Facebookに似たダイナミックなユーザーインターフェースを持つYammerが19%とトップシェアとなった。ただし、この調査にはFacebookなどのパブリック・ソーシャルネットワークは含まれていないので注意したい。

いかに社内ソーシャルを活性化させるか?

社内ソーシャルネットワークをいかに活性化するか。実はこれが最大の難問だ。すでに先行導入した企業の多くでは、好きな少数の社員しか使わない閑散とした場になっているのが実情だ。ナレッジを共有してほしいと企業が願う専門性の高い社員はそもそも忙しく、かつ自身の知見は社内出世のための武器と思っていることが多く、積極的に関与してくれない。また利便性よりセキュリティを重視するアプローチは失敗への最短距離と言えるだろう。そんな背景から、この社内ソーシャルの場をいかに活性化するかは、活用の要諦となる。運用のポイントとしては、次の3点にまとめられるだろう。

  1.  交流の楽しさを演出する
    締めつけや強制はご法度だ。活用ガイドラインはできるだけシンプルに、またFacebookを活用する場合は友人申請ポリシー(仮に上司から友人申請が来ても断って良いなど)などのルールも明確にしておくこと。楽しさを体感するためには、FacebookやYammerなど、リアルタイムなお知らせ機能などのダイナミックなユーザーインターフェースや応答時間が重要になる。
  2.  ファシリテーター(まとめ役)を置く
    コミュニティの立ち上げ期において、潤滑材となるファシリテーターの存在は非常に重要だ。特に参加者がソーシャルネットワークに慣れていない場合、いかに丁寧に初心者に対して習慣化を促していくか、このスキルにかかっていると言っても過言ではない。
  3.  部門を横断して参加できる企画を実施する
    初期活用を推進するために、インナーキャンペーンを積極的に実施することをおすすめしたい。具体的には社内新規事業などのコンテストや、各部門からの自己アピール促進などだ。また業務におけるプロジェクト利用を促進することも効果的だ。
ソーシャルネットワークは人が人を呼ぶービスだ。したがって、ヒトケがなく閑散としていると自然と人が寄りつかなくなる性質を持っている。そのため、まず部門を限定して活性化させ、徐々に全社に広げていくアプローチも有効だろう。参考まで、活用部門の調査結果があるので掲示しておきたい。

また導入後の効果測定について触れておきたい。例えば電話や社内メールを導入する際に効果測定の指標を持つことがほとんど無意味なように、社内コミュニケーションツールの経済効果を測定することは極めて困難だ。したがって、社内で活発に利用されているかどうか、活性化の度合いを指標とするのが望ましいだろう。具体的にはアクティブ利用者数、投稿数、エンゲージメント率などだ。ツールによって測定可能な指標は異なるため、導入前にしっかり確認しておく必要がある。

参考まで、Altimeter調査における測定指標に関する調査結果は以下の通りとなっている。

最後に宣伝で恐縮です。ループスでは最適ツール選択や活性化支援、ガイドライン制作や教育サービスをご提供しています。ご興味ある方はお気軽に お問い合わせ くださいませ。

Original Page: http://media.looops.net/saito/2012/03/05/social-enterprise/

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