2012年3月19日月曜日

日本はSEM後進国なのか否かの考察(2) / 検索エンジンマーケティング考

日本はSEM後進国なのか否かの考察(2) / 検索エンジンマーケティング考

by sembear, sembear.com
November 30th -0001

日本はSEM後進国なのか否かの考察(2)


前回の続き

さて、前回意味深に書いた
実はすごく根本的かつ根源的な日本とアメリカとの差異があると思っているわけです。
この部分ですが、さっそく答えから書いてしまいましょう。

(1)アメリカの広告主のCVRの高さ
(2)アメリカの広告主の許容できるCPA上限の高さ(ROASの低さ、と言い換えてもよい)

オーバーチュアにいたころ、広告主向けソリューション(コンバージョンがらみとかもろもろ)を担当していた時に、Overtureの歴史上自分が最高の天才だと思っていたSajalというインド人とデータを突き合わせながらもろもろ議論をしていました。議論の中身で言うと、いわゆるコンバージョン率が高まるようなマッチングだとか機能だとかを順次日本でもLaunchしていけば、長期的にはOverture Japanとしても継続的な成長ができるはずだよね、っていうことなんだけど。その議論の中で俺が袋小路にはまってしまったある事実があります。

業種別とかで見てみると一目瞭然なんだけど、たとえばECとかだとアメリカの広告主のCVRは日本の広告主のそれと比べて大体5倍ぐらい高い。EC以外で比較ができる業種とかでも大体3倍ぐらい違う。もちろんCVの定義とかもろもろきちんと調べて、大幅に差異が出そうな部分を考慮に入れてもまあそれぐらい。で、俺とSajalの間での長い長い議論の結果、この現象の一つの原因として日本のオンラインでの購買活動、もっというとネットユーザーのリテラシーの違い、と解釈するべきではなかろうかという結論に達しました。もちろんそれ以外の要因もあると思うし、この結論が間違いだという可能性も否定しないけれど、少なくともオンラインで何か決裁をする上での抵抗感とかクレジットカードの普及、決済額の比較を見ても、このリテラシーの差異がCVRに対して無影響だ、ってのも言えないと思うのね。

んで、一部の広告主のヒアリングデータをみて愕然としたのは(2)のポイント。許容できるCPAが日本と比べてやはり2倍から3倍ほど違うわけです。勘のいいリス男女なあなたはは(2)のポイントについて「LTVを加味しているのかの違いじゃね?」って思ったりするかもしれないし、もちろんそれもあるんだけど、自分が知ってる限り日本においてLTV含めてCPAを設定しているクライアントと同業態のアメリカのクライアントを比較してもやっぱり2倍近く違う。こうなってくると、つまり一商品を売り上げた際の粗利の額が違う、と判断せざるを得ないわけですよ。つまり企業としての体力の問題ね。

#ただこの話は2008年当時の話でもあるので現在は状況が異なっている可能性が高いので要注意

で、前回のPostのポイントを見てほしいわけです。
(1)広告主の取り組み度合い
(2)自動化とかツールとか
この二つのポイントって実は今回書いた差異が一番効果的に作用する部分だと思ってるんですね。

というのは広告主の観点からしてみたら、

→リスティング広告の掲載はじめたぞ(゚Д゚)ゴルァ!
→掲載はじめるとそれなりに普通にしていてもコンバージョンが発生するそ(゚Д゚)ゴルァ!
→粗利率もいいからCPC上げられるぞ(゚Д゚)ゴルァ!
→またある程度CV稼げるぞ(゚Д゚)ゴルァ!
→商品の発送とかで時間が無くなるぞ(゚Д゚)ゴルァ!
→ツール代を払ってもペイできるぞ(゚Д゚)ゴルァ!
→じゃツール使うぞ(゚Д゚)ゴルァ!
→したがって(以下略(゚Д゚)ゴルァ!

っていうサイクルですね。あ、最後の(゚Д゚)ゴルァ!いらなかった。まあいいや。

つまりアメリカの市場環境ってのはある程度素人であってもリスティング広告ってのは結果が出やすくて、かつ問題点を改善すると目に見えて結果もよくなりやすい、かつ自動化も進めやすい環境だった、ってことなわけです。

#これはAdExchangeとかAudience Targetingとかでも同じことが言える

で、振り返って日本。
このBlogを読んでくれているモテモテで困っているリスティング男女は、アメリカと比較するとそもそもCVRが低くてCPAの許容幅が低いクライアントの効果改善を頑張ってるわけですよ。つまりアメリカのリスティング男女が陸上競技場で100m走の記録を測定しているのに対して、足場の悪い砂浜かつ向かい風の中で100m走の記録を測定しているようなもんですね。仮に照英とか松岡修三が横で応援してくれているとしても、すでに条件面として不利なんですよ。なので、リスティング運用のテクニックとか、分析とか、そういうノウハウ面で言えば日本のリスティング男女がアメリカよりも劣っているってことは絶対にない。
むしろ去年のSESで思ったのは、Accelerator Trackで「俺SEMのエキスパートっす」見たいな人が語っていることが、正直微妙だったんですね。おいおい、そんなの常識だろ、と。そんなん日本でも山ほど実践してる人いるんだぜ、とか思うわけですよ。

#そういう意味で、去年のSESには正直がっかりしたところも多かった。
#かといってがっかりしただけで終わらないからこの問題は根が深い。

んで、勘がいい人は気づいているかもしれないけれど、今回書いた二つのポイント

(1)アメリカの広告主のCVRの高さ
(2)アメリカの広告主の許容できるCPA上限の高さ(ROASの低さ、と言い換えてもよい)

これらがなんで「根本的かつ根源的な日本とアメリカとの差異」につながるのか、ということがまだまだ疑問を持たれているのではないかと思っています。でもこれがね、やっぱり根源的な問題なんですわ、ってことで第三章に続きます。

#現在のアメリカの広告主と日本の広告主のCVRとか許容できるCPAとか、
#できればY!とかGにいる人は米国と連絡とってリサーチしてみてほしい。
#俺が知っていた2008年当時と比べてどういう変化があったのか、正直気になるし。


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Original Page: http://www.sembear.com/item/597

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